玄関先の庭木に水やりをしていたら、ハナミズキの枝に、蜂が巣を作り始めているのに気がついた。
そういえば、この田植えが始まる時期、蜂が巣を作り始めるシーズンでもあった。
巣はまだ直径2センチくらいで、蜂のサイズよりは小さい。
蜂に刺されるのが怖いのでこのまま見なかったことにしようか、いやいや、やはり追い払おうかと一瞬逡巡した。
その時、過去に、家の窓辺にできた大きな蜂の巣を取り払うことができなくて、業者を呼んでまで駆除して苦労した経験を思い出した。
巣が大きくなった後では、素人では手の施しようがない。
草木や野菜に水をやろうと、ちょうど水ホースを手にしていた。シャワー水を大雨に見せかければ、蜂が襲ってくることもないかもしれない。
意を決して「ごめんなさい!」と心の中で謝りながら、蜂にシャワーを勢いよく浴びせた。
しかし、蜂も必死だ。せっかく作った巣を手放すまいと、しばらくの間、水の勢いに耐えていた。けれども、やがて力尽きて、地面に「あれー」と流されていった。
そのまま巣もまるごとシャワー水で枝から振るい落とす。
蜂は体勢を立て直そうともがいている。しかし、幸いにも逆襲はなく、ほっと一息をつく。
ひとまず今日のところはこれで決着がついたようだ。
我が家ではない場所に巣を作るのであれば、問題ないからね。
さて、今回の攻防戦を振り返ってみよう。
・そういえば、蜂の巣の一つ一つの穴はきれいな六角形を成していた。測っているわけでもないのに、蜂はなぜあんなにきれいに作れるのだろうか。
・ハナミズキに蜂は寄ってきやすいのだろうか。となれば、木酢液など忌避剤を使わないと、蜂はまた戻ってくるのではないか。
・今年は庭に薪を組むことにしている。薪にも蜂が寄りつくと言う。早急な対策が必要だ。

翌朝——。

なんと、例の蜂がまた同じ場所に巣を作っているではないか。
よほどこの場所が気に入ったのだろうか。
とにかく退治しなくては、安心して枕を高くして眠れない。
一度でも経験すれば、次からは躊躇することなくできるというものだ。
再び水シャワーを蜂に浴びせて、枝から振い落とした。
巣の除去にも取り掛かろうとしたその時、一から新しく巣をつくる方が蜂にとっては簡単で、かえって、巣が残っていたとしても、それが水浸しで使い物にならないなら、蜂もこの場所を諦めてくれるのではないかと思った。
よし、比較試験だ。
というわけで、蜂の巣に水を十分にかけて、見るからに、六角形がふやけている状態にしてみた。
帰宅してからどうなっているかが楽しみだ。
帰宅——。

なんと、蜂がふやけたはずの巣を再活用しているではないか。
し、しぶとい。。や、やるな。どうしてもここが良いんだね、きっと。
3回目の攻防戦にゴングが鳴る。いや、メジャーリーグの3連戦シリーズみたいに、プレイボールがコールされる。
週末のタスクと思っていたが、予定を早めて、木酢液をスタンバイ。
どうだ!とばかりに木酢液を振りかける。
——
——
——
なんの変化もない!geminiは蜂に対して木酢液が有効と言ってたのに!
次の手段は考えてなかった。
アプローチを変えよう。いま自分に用意できる物は何だ。
蚊除けスプレーだ。ナチュラル派のハッカ蚊除けスプレーと、人工派の蚊除けスプレー。
ハナミズキは食用ではないにせよ、大切にして育てているから、まずはハッカだ。
シュッシュッ。お!巣を放棄して葉の裏に隠れた。嫌がっているということか。
もう一回シュッシュッ。やはり嫌がっているが、葉の裏に隠れて、やり過ごそうという気配が感じられる。やはりしたたかだな。
たしかに、蜂の思惑通り、割と高価なハッカスプレーをこのまま使い続けていては勿体ないのであった。
仕方がない。あまり使いたくなかったが、いわゆる蚊除けスプレーの登場だ。
今度はシュッシュッではなく、シューー、だ。
おや?明らかに嫌がっているぞ。
これが蜂に対する現時点の最終兵器(たしか世の中には蜂の殺虫剤もあるかと)。
もう2回ほどシューを繰り返すと、、
蜂は横っ飛びに——前にしか進まなそうな蜂だから横っ飛びと表現するのはいささか不自然なのだが——漫画のようにまさに横っ飛びして、その場を去って行った。
体勢を立て直した後に逆襲してくるのではないかと、しばらくの間、身じろぎもせずに待ち構えていたが、どうやらその気配もないようだ。
一難は去ったようだ(蜂にとっては災難)。
翌朝になってみないとかの攻防戦の決着はまだ分からないが、ひとまず息をふうと突く。
さて翌朝。そこに、蜂は、いなかった。
この攻防戦に生き残ったのだ。
その朝は久しぶりに、静かさと安堵に包まれていた。
蜂や、ごめんよ。どこぞの地で達者でな。














